2017年5月1日月曜日

(続) 開発で感じること

2017/05/02 修正・追記

前回にも記載しましたが、たぶん1細胞やそれ以外もそうでしょうが複数名以上で進める開発プロジェクトは、何をゴールとして それぞれがどこをパートして 全体どれ位までいけばOKとして いつまでに達成するのか決め、都度進捗状況を確かめるとともに労力が足りているのかを確かめる事が必要だと思います。

ミーティングで、単なる行為の報告をしても悪くはないのですが、そもそも目標をどれ位達成しているのか?その目標期間で終わるのか?労力が足りているか?目標の具体的な表現手段についても共有されているか?これらがうまく行かなかったら手を引くのかさらに労力をかけて進めるのか?などが議論されていないと、すくなくとも私には難しいです。そのプロジェクト。

基本的には、関わったプロジェクトに限らず、皆にうまく行って欲しいとおもっています。ただ最近、自分には限られた時間しか無いことを痛感します。限られた中でどのように成果を上げるのか?関わったり・下支えしたプロジェクトが上手くいくのか?そもそも自分の貢献はどこなのか?お手伝いやノウハウ伝えだけになっていないのか?

うまくいくか行かないかは研究だからわからないけど、目標・ゴールに達成しないときは、少くても精算はした方がいいと考えられる。うまく行った時、追加で目標・ゴールを変えるときも同じように考え直したほうがいいと考える。そもそも目標を達成するために刻むのと、ゴールや目標を変えるのは全く意味が異なりますし、その途中や論文執筆で ゴールを変えたもしくは変わっても、dataや方法が変わるわけではない。また、其のような実験デザインで進めているわけではないので、変更した目標・ゴールに即していることはまれなのですぐには言えないはずです。 ゴールに合わせた開発・解析・実験が必要になり、つまり労力の追加がされるとともに、趣旨が変わるのでそれまでのデータは使えなかったりする。そこから開発がはじまり、長大な時間がかかると推測される。これはしんどい。単位時間あたりの開発力が上回らないと、結局は競争に負けるわけだし、たんに時間を積めばいいわけでもないと考えられる。前目標で少なくともある程度疲弊した状態で新目標を達成できないようなきがする。どこかで切り替えが必要だと思う。何らかの形で。契約書作って、変わったら再契約もしくは精算っていうノリが近いとおもう。

無限にプロジェクトに複数名の労力をかけ続けるのは無理だろう。プロジェクトに関わった人に期限内に労力に見合った成果が帰っていくようなことを日々目指している。研究の持続可能性は、個人の幸せからもくるとおもうから。





2017年4月12日水曜日

(Q&A) DNase I treatment for RNA purification

2回くらい訊かれたのでココに記載しておきます。

Q: RNA-seq用に使用するtotal RNAだが、column精製による抽出時にDNase I処理した方がいいか。

A: 処理をお薦めします。よいcolumn精製だと殆ど入ってきませんが、qPCRなど高感度なアプリケーションには2度DNase I処理する場合もあります。また難しいサンプル1細胞あたりのtotal RNAが少ないものでは、相対的にgenomic DNAがおおくなり、genomic DNAの比率が高くなる危険性が有る。1細胞あたりのtotal RNAを計算しようとする場合だと、オーバーエスティメートしてしまいます。難しいサンプルのはずなのに、total RNAが多いとミスリードして1細胞RNA-seqが失敗する可能性もあります。bulk poly-A RNA-seqですと、そもそもoligo-dT beadsでキャプチャーするので原理的に除かれてしまうとおもいますが、高感度なアプリケーションではあるので、やっておいたほうが無難だと思います。

2017年3月8日水曜日

1細胞ゲノミクス手法の開発に必要な単位

はじめに
あくまで個人的な感想ですが、1細胞ゲノミクス手法の開発に必要な単位が有るように感じ、それから外れたものはうまくいかなかったもしくはいかないような気がします。何か法則性がないのかなと引っかかるところがあったので、気づいた部分を忘れないために書いておきます。

現在、single-cell RNA-seqを含む1細胞ゲノミクス手法の開発は、実験手法の開発だけでなく、解析手法の開発競争も苛烈さを増しており、よりチームで体制を整えて戦っていかないと個人ではとても勝てない状況になっていると感じられます。

2010年頃、Quartz-Seqの開発を始めた頃、現在のような競争速度はなく、ある程度、個人研究の範囲内で、実験手法の開発はでき、解析者との共同研究もうまく行ったので、2013年に論文を発表することが出来たが、現在おなじような開発スケジュールや体制で進めたら勝つことは出来るのか疑問です。


上記にimageする最小単位や影響するファクターとその影響度合いの個人的な印象をざっくり書いてみました(赤枠は必須)。必須な部分をおさえつつ、ある程度の開発速度を持っていかないと世界と戦えないという点はかわりませんが、開発速度に影響を与える効率に関しては個人の能力やエフォートなど様々なファクターに影響するので、値はあくまで印象です。

両者(実験研究者と解析研究者)が必要
1細胞ゲノムクス手法の開発ですが、より解析手法を把握した上での実験手法の開発がないと、最終的にバイオロジカルな情報を引き出す上で最適な実験手法の開発になっておらず、十分で有効な手法になっていないということが容易に想定され、結果、最終的によい方法にならない可能性が高まる。つまり実験手法開発の初期の段階から、解析研究者とタイトに組んだほうが良いし、両者(実験研究者と解析研究者)が必要です。また両者がそれぞれある程度のエフォートをかけることが必須でしょう。

両方デキる人が1人いれば十分ではないか?という問いに対しては、解析・実験手法開発を直列に繋いですすめるので、遅くなってそれでも先をこされないオリジナリティーの有るものであれば可能かもしれません。ただし、1細胞ゲノミクスの分野は非常に込み合っており、同じようなアイデアを持って進めている人がいる確率はとても高いです。そうなった場合、開発スケジュールの早い体制を作ったものが勝っていく、開発効率の問題になります。オンリーワンの分子生物学的コア技術を作って、速度競争から逃れたいとは思っていますが、完全に逃れることはなかなか難しいとも感じます。最低1人ずつ必要で、それができたとしてもまだ海外での人材投入規模との乖離は大きいようにもみえる。

実験テクニカルスタッフの必要性
両者(実験研究者と解析研究者)が必要ですが、それに加えて、実験テクニカルスタッフもやはり必要だと思います。実験手法の大枠などは、研究員が作り上げる必要がどうしてもありますが、方法のロバストさを上昇させるためのブラシアップといった部分の労力も多くかかり、この部分を担当する実験テクニカルスタッフがいないと多くの時間がかかります。イーコール:開発速度が遅くて先を越される可能性が高くなる。ということだとおもいます。いないと1.5倍以上かかるのではないでしょうか?実験研究者が手を動かせず指示だけ出すようなスタイルを取るのであれば、そもそも開発が成り立たない場合もあるでしょう。成り立ったらすごいとおもいます。

世界と戦えるタイムスケジュール
世界と戦える開発タイムスケジュールはどうあればいいのか?フィーバーして人材もお金も投入されて激混みしている1細胞の場合、それに見合った開発速度があるはずだと思います。そこで成果を出すのであれば。その速度が少しでも世界より遅いと、後追いになり論文がでにくくなり、その次の論文にも影響し、っと1度まけると次に勝つのがどんどん難しくなっていくと感じます。実験開発のプロトタイピングという意味では、半年以内が目安になるかもしれません。後述する出来上がったパーツパーツを組み合わせて方法を組み上げていったとしても、方法の枠組みが出来るのに最低数ヶ月はかかり、ブラシアップにも時間がかかることを考えると半年かかるかと。ここに影響するものとして、プロトタイピングで使用する方法のパーツパーツのノウハウが蓄積していないと、プラス半年かかると思います。半年ほどで、論文のfigに使用できるくらいの最初のdataを、解析研究者に受け渡せるくらいのスケジュールが目指せると、戦えるイメージが持ててくる。そこからはData出し、検証、論文化とすすめていく。

後追い
最初に荒くてもPOCを示した方法が出てしまうと、たとえその方法がとても使いにくく問題があった方法であったとしても、後追いになると、要求されるdataがとても多くなります。これは、どの品質で出すかという点も影響すると思いますが、開発速度を保つこと前提で、加えてスケジュールを区切ってしまわないと、後追いになる確立が上昇していき、より多くの労力を割くことにつながる。つまり消耗し未来の研究をスタートする時期が遅れます。

シーズおよびノウハウの蓄積の重要性
1細胞ゲノミクス手法は複数のパーツから成り立ち、そのパーツパーツのノウハウを蓄積しておくと、開発完成までの期間を短くすることは上述のとおりです。でもこのようなノウハウの蓄積はある程度、日々やっておかないと、一朝一夕に揃えることは出来ません。技術の動向やその導入などでは使えるパーツの選定ができるでしょうし、パーツ自体をつくるということに労力を割いてオリジナルパーツをつくれば、ひいては高いオリジナル性を持った方法になる確率が高くなる。後述の部分はとくにシーズとなる技術の芽をだすものなので、継続した注力が望まれる。それが持続可能な技術の改善・刷新を支えると自分は思います。2回目からはノウハウなどのベースラインを活用しつつ技術開発できるから、最初よりもコストが低くなる点も是非活かしたいです。

自分なりのまとめ
開発を開始するにあたって、個人的な感想だが、上図(必要な最小単位)の部分が足りているのか見たほうがいいとおもう。上図の体制の部分に当てはめた際に、足りない部分があった場合、其のプロジェクトは多分うまくいかない可能性がとてもたかいと思う。開発効率・速度の問題が大きいので、きちんとその速度を定量化して可視化し、足りてないなら、単位時間あたりの開発量をあげたほうがいいのではないだろうか。

おわり
1細胞での開発速度から以上を感じたが、べつに他の研究でもそれはそうだしなぁ。 なにあたりまえのこといってんの?って感じの印象になりましたが、自分なりには現時点の印象をまとめられてすっきりしました。

2017年1月23日月曜日

Erratum to Quartz-Seq paper

Previously, we reported single-cell RNA-seq method, Quartz-Seq. Recently, we noticed some errors in the original paper. Therefore, we reported the correction about Quartz-Seq paper. I apologize for these errors.

2017年1月19日木曜日

KAPA Real-Time Library Amplification Kit - Kapa Biosystems 代替手段について

LIMprepやLIMprep2というdsDNAをsequence library DNAに変換するための方法というのを以前公開しました。ラボからダウンロードできる状態にあります。http://bit.riken.jp/protocols/

一方で、このプロトコル内で使っているKAPA Biosystems社の
```
KAPA Real-Time Library Amplification Kit
```
ですが販売停止になってしまったようです。ユーザーさんからフィードバックを受けた知り合いのディーラーさんから連絡を受け初めて知りました。なんと。
自分らのラボではストックがあったので気づきませんでした。

代替手段が無いわけではないのでここにやり方を記載しておきます。

KAPA Real-Time Library Amplification Kitは、qPCRをベースとした方法でLibrary DNAのPCR増幅サイクル数を検出するためのキットです。つまりqPCRができるための蛍光試薬があれば簡単に代替できます。以下が自分で検証した方法です。

EvaGreen
http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/00990009.asp?entry_id=3650
KAPA HiFi HS ready mix
http://www.n-genetics.com/product_detail.html?item_id=4093
まず上記の製品を購入し、

KAPA Real-Time Library Amplification Kitを使うパートを上記に置き換えると良いです。

2xKAPA HiFi HS ready mix     5uL
10uM TPC mix     0.35uL
Nuclease free water     2.15uL
20x EvaGreen     0.5uL
Adaptor ligated DNA     2uL
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total volume 10uL

検出条件等は変わりません。

注意点ですが、ディスコンになったキットには、蛍光スタンダード4種類がついていました。これは今のところどうやってつくるか検討していません。やればできそうですけど。。。

つまり増幅曲線をみて一度ライブラリDNAを作って頂き、収量との相関を見てみるという作業が必要かもしれません。個人的には、増幅曲線での上がり始めと終わりの中間あたりのPCRサイクルを採用するのは無難かもしれないと思います。